忘れられないのに思い出せない話

 

忘れたくない、忘れられない何かの話をしたい。最近、忘れられない人のことをずーっと考えている。

たとえば誰かと付き合って、もし結婚なんかしてしまっても、忘れられない人っているもので、あぁ、これは誰かの受け売りだなあ。それでもちゃんと、それを実感したからお話したい。

忘れられない人はいるけど、私はきっと、誰かの忘れられない人にはなれないんだろうなあっていうお話。人生で一番好きだった人にとっての忘れられない私な自信は少しもない。だってあの頃も今も私に魅力はないと思っているからね。見た目がそれなりに整っていて、そして人として芯がしっかりあって、魅力的な何かを持っている人が、誰かの忘れられない人になるんだろうなあって思うよ。

私は身近な人の恋路は応援できないタイプの人間だけど、幸せになってほしいなって思うよ。会いたいとか、会えないとか、会ってはいけないとか、そんな私の過去の恋のお話は置いておいて、きっとみんないるんだよね、そんな人。私が素敵だなあって思ってる人にもいるんだってよ、そんな人が。

私は大人だし、理性があるから会えないけど、理性がなかったら会いに行っちゃうくらい好きだったと思うんだ。そんな人がいるんだって、忘れられない人がいるんだって。それだけなら幸せになってほしいなってそれで済んだけど、今でもずっと好きなんだって。忘れたことなんて1度もないんだって。何だか心がきゅーってなったよ。

私が誰かの忘れられない人になれないことも、この世の誰かは、私が好意を抱いている人にこんなにこんなに大切に思われているんだなあってことも、特に何か思うわけじゃないけど、私の心にぽっかり穴を空けたなあ。

ぼーっと歌を聴いていて、この歌を聴くたびに忘れたくないライブの空間を思い出すことは出来るけど、離れた人とかもう会えない人を思い出すのってものすごく難しい。執着していた煙草のにおいも、幸せを感じた感触も、もう何も思い出せなくて、ただ、過去の自分を否定しないために持ち続けている中身のない"好き"だけが残っている。

忘れたくない、忘れられない、だけど、思い出せない。

幸せになってほしいなあ。